*Simutrans Experimental [#p8ed9ac2]
#contents
※version112.3-11.35時点での情報です。バージョンアップによる機能追加が激しいのでinternational forumを参照されることを推奨します。
※version112.3-11.35時点での情報です。バージョンアップによる機能追加が激しいので[[International Forum>http://forum.simutrans.com/#c19]]を参照されることを推奨します。
*概要 [#yfd73883]
Simutrans experimentalはSimutransの機能拡張版と言うべきものです。通常版Simutransでは[全ての環境で動作する]ことを念頭に置くため動作が重くなるような機能は避けられる傾向にありますが、standardで捌けられた複雑な機能を実装するものがこのExperimentalです。
国際フォーラムのExperimentalスレッドでは既存のSimutransとSimutrans Experimentalを「standard⇔experimental」と区別しているので、ここでも既存のsimutransを&color(#0000ff){standard};、simutrans experimentalを&color(#ff0000){experimental};と書くことにします。
experimentalはstandardに比べ、かなり拡張されているため、standardの機能・プレイスタイルを知り尽くした上級者向けSimutransの性格が強いです。拡張された路線スケジュール、より複雑化されたルート検索、カーブ手前での減速など、よりゲーム性を高める追加機能が盛り込まれています。
*インストール方法 [#p7877b22]
[[version112.3-11.35のリリースページ(DLページ)はこちらです。>http://forum.simutrans.com/index.php?topic=13772.0]]
**全プラットフォーム共通 [#va510969]
experimentalでは
-プログラム本体のバイナリ
-設定ファイル群
-pak

の3つが必要です。standardでは上2つが最初から同梱されていますが、experimentalでは分離されているので注意しましょう。バイナリはOSごとに異なるものが必要ですが、設定ファイル群とpakは共通です。
設定ファイルはexperimentalのリリースページからダウンロードできます。(Configuration filesと書かれているものです。)

experimentalではstandard用のpakセットも使うことができますが、experimentalの機能を最大限活かすためにはexperimental用のpakファイルが必要です。現在確認している限りではexperimental用pakセットとして
-Pak128.Britain-Ex 
-pak64.Exp
-Pak.german-exp
-Pak64.19th Century.Experimental

があります。standard用pak128に対応するpakがexperimental向けには存在しないので、pak128がお好きな方ははじめはstandard用のpak128をそのまま使ってみるのもひとつの手でしょう。
(動作保証はないです。通常版makeobjによるpakファイルもexp版上で動作自体はすることになっていますがあらぬ値やエラーを吐き出す可能性があります。)

以下、プログラム本体のバイナリの準備の仕方を解説します。

**Windows [#p0a209ac]
Windowsの場合はexperimentalのリリースと同時にたいていwindows用のバイナリがリリースされるので、リリースページからWindows binariesをDLしてpakとConfiguration filesをつっこめばプレイできます。

32bit機の場合はSimutrans-Experimental.exe、64bit機の場合はSimutrans-Experimental-x64.exe
を起動します。

※「コンピュータに MSVCR110.dll がないため、プログラムを開始できません。この問題を解決するには、プログラムを再インストールしてみてください。」というエラーメッセージが出て起動できない場合は、[[Microsoftのサイト>http://www.microsoft.com/ja-jp/download/details.aspx?id=30679]]から「VSU4\vcredist_x86.exe」もしくは「VSU4\vcredist_x64.exe」をダウンロードして、ダブルクリックしてインストールしてください。
**Mac [#f52ab3d1]
一部のバージョンについては有志でバイナリを作ってくれる人がいるみたいですが、基本的にMac用バイナリは存在しないので&color(#990000){自分でコンパイルする必要があります。};大丈夫です。コンパイルの仕方はstandardよりむしろ簡単です。
以下、コンパイルのしかた
+(まだしてない場合)Xcodeをインストールする。(gccが必要なためです。Mac App Storeから無料でDLできます。すっごく容量を喰いますがこれをやらないと先にすすめません。)
+(まだしてない場合)MacPorts(https://www.macports.org/)をインストールする(このソフトウェアはこの先で使うプログラムをインストールするのに使います)
+(まだしてない場合)MacPortsを使ってlibsdlをインストールする。具体的にはターミナルで
「sudo port install libsdl」
と入力。インストール時にはシステムのパスワードを求められます。(libsdl2をインストールしてもうまくいきません。)
インストールが終わったら
「port installed」
でMacportsでインストールされたソフトウェア一覧が出てくるのでその中にインストールしたものが入っているか確認するといいと思います。
+experimentalのソースコードをDLする。GitHubからDLできます。[[ここ>https://github.com/jamespetts/simutrans-experimental]]の「Download ZIP」ボタンを押すとDLできます。DLしたファイルは展開してお好きなところに置いてください
+ソースフォルダの中の「config.template」の拡張子を「.default」に変更して、miなどのテキストエディタで開く。その中で
「#BACKEND = sdl」
「#COLOUR_DEPTH = 16」
「#OSTYPE = mac」
「#DEBUG = 3」
「#OPTIMISE = 1」
「#FLAGS = -DUSE_C」
の行の先頭の"#"を外す
例えば「#BACKEND = sdl」の行なら「BACKEND = sdl」となります。
&color(#777777){(本当はDEBUGとOPTIMISEは両立しなかったりといろいろ問題はあるのですが、とりあえず動作はするのでここはこれで放置しておきますです。)};
+ソースフォルダの中の「freight_list_sorter.cc」をmiなどのテキストエディタで開く。その中で
「#include "malloc.h"」を「#include "stdlib.h"」に変更する。(コードの比較的冒頭のあたりにあります。)
+cdコマンドでsimutransのソースフォルダのディレクトリに移動して、ターミナルで
「make」
と入力して実行

これでソースフォルダ中の/build/defaultにsimtrans-experimentalという名前で実行ファイルが生成されるはずです。あとは実行ファイルだけ取り出して、pak、Configuration filesと一緒のフォルダにつっこめば動作します。

**Linux [#s8adfc81]
現状Linuxバージョンもバイナリが配布されていませんので自分でコンパイルする必要があります。DLの仕方はMacの項で説明したとおりです。
Linux上でコンパイルする方法は以下の通りです、一部Mac用バイナリのビルド方法と説明が重複しています。
(ビルド環境 Ubuntu 14.04 / gcc 4.8)
+(入っていない場合)gccをインストールします
「sudo apt-get install gcc」
+(入ってるいない場合)ビルドにSDLのライブラリが必要になるので開発用のパッケージをインストールします
「sudo apt-get install libsdl-dev」
+ソースフォルダの中の「config.template」の拡張子を「.default」に変更して、Emacsなどのテキストエディタで開く。その中で
「#BACKEND = sdl」
「#COLOUR_DEPTH = 16」
「#OSTYPE = linux」
「#DEBUG = 3」
「#OPTIMISE = 1」
「#FLAGS = -DUSE_C」
の行の先頭の"#"を外す
例えば「#BACKEND = sdl」の行なら「BACKEND = sdl」となります。
+この後はMac向けのバイナリのビルドと一緒です

*既存のsimutransとの差異 [#t3811739]
「experimentalはstandardとココが違う!」所を説明します。
※internationalフォーラムの[[「Overview of Simutrans-Experimental features」>http://forum.simutrans.com/index.php?topic=1959.0]]を日本語に要約しただけのものです。詳しく知りたい方はinternational forumへどうぞ。
**拡張されたスケジュール機能を用いたダイヤ設定 [#n5446be3]
experimentalではスケジュール設定機能が拡張され,通常の[積むまで待機]のほかに1ヶ月の1/nのタイミングで発車を許可する機能が追加されています。
また,後述しますが車両の積載量に対し過積載として定員以上の積載を許容する機能が追加されているため,通常の[積むまで待機]も最大値が100%から400%まで引き上げられています。
結果として,車両ごとに設定された過積載量を上回る量だけ[積むまで待機]をかけ,同時に指定時間での発車も設定することで,列車の発車タイミングを完全に制御することができるようになります。

概念だけではわかりにくいので具体例をあげて説明します。

そもそもexperimentalではstandardのような「◯◯年◯◯月◯◯日」といったような時間の扱いではなく、下のような時間でゲームが扱われます。「日」がありません。
#ref(STE_figure1.png)

この場合、1ヶ月の長さは3時間12分00秒で、そのうち現在は2時間33分07秒であるということです。
但しゲーム内で1ヶ月が過ぎるのに本当に現実世界で3時間12分かかるわけではありません。やってみればすぐわかります。
1ヶ月の長さはbits_per_monthとmeters_per_tileもしくはdistance_per_tile(どちらをゲーム内でパラメーターとして使用してるかによる)で変わります。詳しくは[[international forum>http://forum.simutrans.com/index.php?topic=7897.0]]にありますが、こだわりがなければあまり気にする必要はないと思います。但し、車輛の加減速性能や旅客発生がbit_per_monthに依存するようになっているため極端に変更するとゲームの進行性に支障があるかもしれません。

話を先に進めましょう。%%%experimentalではダイヤは路線ごとに割り当てられます。編成にはダイヤを設定できません。%%%路線編集ウィンドウから路線編集ボタンを押すと、standardとは編集窓の様子が違うことに気づくでしょう。
#ref(STE_figure2.png)
experimentalのダイヤ概念自体は単純です。
「設定時刻になったら発車する。それまではひたすら待つ」です。そしてexperimentalのダイヤ制御は「積載待ち」への付加機能として実装されています。

発車時刻を設定したい駅を選択し、「積むまで待機」を100%以上に設定します(画像では400%に設定しています。これで満員になっても過積載容量に達しない限りは発車時刻までちゃんと列車は待ちます。)
次に「Spacing value」を設定します。画像で「4」となっているものです。これは1ヶ月に発車を許可する間隔を示していて、この場合は48分間隔で発車が許可されます。(48分×4=192分=3時間12分ですから、1ヶ月に4本発車が許可される、という意味です。「Spacing value」を入力するボックスの下に「48:00」と表示されています。ここを見れば何分ごとに発車が許可されるかがわかります。)
さらに「Shift」を設定します。これは発車を許可する時間を変えるものです。画像ではShift = 53で7分4秒ズラしてます。

具体例で行きましょう。
Spacing value = 4(つまり48分間隔∵1時間=192分)、Shift = 0の場合
00:00:00
00:48:00
01:36:00
02:24:00
03:12:00
......
といった時間に発車が許可されます。

Spacing value = 3(この場合は64分間隔です。ボックスの下に表示されます。)、Shift = 75(10分ずらし。どれだけ実際ズレるのかも、Shift入力ボックスの下に表示されます。)の場合
00:10:00
01:14:00
02:18:00
03:22:00
......
といった時間に発車が許可されます。

ここから導きだされる結論として、%%%''パターンダイヤを組む場合そのパターンの周期は1ヶ月の長さの1/n倍に限定される''%%%と言えます。(nは正の整数)1ヶ月の長さが長いほど、多様な長さの周期を作り出せるのでダイヤが比較的組みやすくなります。(spacing valueは1から999まで指定できるので周期が短い場合の心配はいりません。)


#ref(STE_figure3.png)
↑がんばってダイヤを組んでみたの図

注意しなければならないことがいくつかあります。
一つ目。現状のexperimentalでは一切の遅延を許容しません。1秒でも遅延すれば次のサイクルまで待たされることになります。
あまり多くの箇所で発車時刻指定をするとひっかかるリスクが高まるので、特段の事情が無い限り、発車時刻を設定するのは折り返し駅と待避駅だけでいいと思います。

二つ目。experimentalでは「折返し時間(reversing time)」が導入されています。
双方向運転が不可能な列車(機関車牽引列車など)は特に長い折返し時間を要するためこれを見越してダイヤを組む必要があります。
またexperimentalに対応していない車両を無理やり使う場合も双方向運転不能なものとして扱われます。
//折り返し駅で発車時刻を設定した場合、reversing timeの扱いが結構微妙で、書いてる人もいろいろ実験してみましたが発車時刻になってからreversing timeがカウントされる場合もあればreversing timeも含めて発車時刻になるようにカウントされる場合など、結果がまちまちでした。実験した限りだと8両編成の電車でreversing timeが5分取られているのでこの乱れはとても看過できるものではありません。(reversing timeと発車時刻待機の関係がはっきりとわかった方はぜひとも追記をお願いします。)reversing timeは遅れの回復を困難にしたり折り返し時間に制限を加えたりといろいろ面倒なのでこいつを0にする方法があります。

//'''&color(#ff0099){※[2015/3/22追記]取り消し線の部分については下の「折り返し」の項目で説明します。};'''

//simuconf.tab(実行ファイル本体が入っているフォルダにあるconfigフォルダの中のやつ)で

//unit_reverse_time_seconds=0
//hauled_reverse_time_seconds=0
//turntable_reverse_time_seconds=0

//と設定して&color(#ff0000){新しいゲームを開始};してください。この設定はゲーム毎に保存されるものなのでsimuconf.tabを書き換えただけでは既存のゲームには影響しません。
//高度な設定ツールで編集しようとしても実はその中にパラメーターがありません。さらにはセーブデータの中に保存されている設定を起動時に置き換えるsimuconf.tabのパラメーター

//progdir_overrides_savegame_settings = 1

//も実験しましたが効果がありませんでした。
//reversing timeを無効にする設定は今のところ、%%%''新規にゲームを開始するときしかチャンスがない''%%%と考えておいたほうがよさそうです。

※参考にしたサイト:[[http://forum.simutrans.com/index.php?topic=9241.0>http://forum.simutrans.com/index.php?topic=9241.0]]
**金融・経済の部 [#d420269f]
:収入の計算|
standardでは積荷の種類(ここでは旅客も積荷として扱います)、輸送量、及びスピードボーナス等から収入が計算されます。experimentalではさらに、旅客の場合のみ「快適性」が考慮されます。長距離の移動になるほどスピードの影響が大きくなります。定員オーバーの駅を経由すると旅客の場合は収入が下がります。要は短距離の移動に超高速な移動手段を提供してもあまり収入は増えませんよということです。(standardでは距離に関係なく平均速度とspeedbonusの基準の関係から収入が計算されます。)
:借金について|
standardでは総資産が負にならない限りいくらでも借金できます。
experimentalでは借り入れの限度額が設定されていて、この限度額を超えると車両を買ったり交通インフラを建設したりといったことができなくなります。但し運行に必要な維持費、運行費は払うことができます。また、負債には月10%の利子がつきます。また、破産しないというオプションも用意されています。
借入限度額はそれまでの収益性から自動的に設定されます。(公共事業には借入限度額はありません。)また「破産ライン」も自動的に設定されます。これらはsimuconf.tabで調整できます。
:産業について|
standardでは産業施設は一度建設されると基本的にずっと操業できます。
experimentalでは産業施設に「引退年」が設定されていて、引退年の30年以内に自動的に操業不能になります(いつ操業不能になるかはランダム)。閉鎖された産業施設の関連産業施設(原料の供給元、生産物の供給先)は他の有効な産業施設に供給元、供給先を切り替えますが、それができない場合は関連産業施設も閉鎖されます。これらはプレイヤーに通知されます。産業施設を更新することもできます(experimental用pakセットが必要)。なお産業施設全体の数/総人口 の値が規定値を下回ると新たな産業施設が建設されます。
またexperimentalでは商店など消費のみをする産業施設は都市内に立地するようになります。さらにこれらの産業施設の月間消費量は都市の規模に依存します。
:旅客流動について|
standardでは年代ごとに近距離・遠距離のバランスが指定できます。
experimentalでは基本的に近距離流動が多くなります。また、経路なしの旅客の多くは別の行き先を探します。このためまだ接続されてない都市が残っている初期段階でも比較的多めに旅客が発生するようになります。simuconf.tabでだいたい決められるようです。
:旅行時間の制限|
standardではどれだけ時間がかかろうが旅客は目的地へ向かおうとしますが、experimentalでは「旅行時間制限」が存在します。旅行時間制限は"旅客が目指す目的地への距離"と"simuconf.tabで定義されたランダム度"を考慮の上ランダムに決められます。停車場のグラフに「too slow」という項目があり、これが旅行時間制限に見合わなかった旅客の数です。
:乗り換え時間と徒歩移動|
standardでは駅の集客範囲内の旅客がその駅を利用します。旅客発生元と目的地が同じ駅の集客範囲に含まれる場合は"walked"と扱われます。
experimentalでは旅行時間に徒歩移動の時間が含まれます。旅客の徒歩移動の場合は5km/h、貨物の人力移動の場合は1km/h扱いです。(これらの値はsimuconf.tabで変更できます。)旅行時間が「旅行時間制限」の半分以下、かつ徒歩が最も速い手段の場合は旅客は必ず歩いて目的地へ向かいます。それ以外の場合はプレイヤーの交通を利用します。
また、駅で乗り換えをするときも駅の大きさに応じて乗り換え時間が旅客時間に加算されます(駅の中を徒歩移動扱いです)。
この機能(?)は集客範囲が8〜12といった広範囲の場合に大きく影響します。また、experimentalでは旅客と貨物で異なる集客範囲を設定できます。
:自家用車|
experimentalでは常に自家用車で目的地へ移動する旅客がprivatecar.tabに従って一定割合存在します。この割合は一般的に時代が進むほど増えます。また、自家用車で移動できるけどプレイヤーの交通機関とどっちがいいか選択する旅客も存在します。自家用車での移動は市内の「渋滞」を引き起こします。市内の渋滞度が上昇するほど自家用車による旅行時間は長くなり、結果としてプレイヤーの交通機関を選択する割合が大きくなります。しかし渋滞度がグラフで100を超えるとその都市の発展が完全に止まります。よってプレイヤーは道路網を充実させたり交通機関を充実させたりして渋滞をある程度おさえねばなりません。
なおプレイヤーの私道への自家用車の乗り入れを禁止することもできます。(アクセス権)
:古くなった乗り物の維持費|
standardで年代設定アリの場合引退年を過ぎるとその車両の新造ができなくなりますが、既に走っている編成については影響ありません。
experimentalでは新造ができなくなった数年後に編成自体が"obsolete"扱いされ、徐々に維持コストがかさむようになります。40年ほどかけて最終的に初期価格の400%までになります。simuconf.tabで調節ができます。
:固定維持費|
standardでは編成(乗り物)の費用は移動距離に応じて発生します。動かなければ費用は発生しません。
experimentalでは固定の維持費、すなはち何もしなくても自動的に発生する維持費が設定できます。(experimental対応のpakファイルが必要)なお車庫に留置すると維持費が安くなります。
:距離スケール|
standardでは1タイル=1キロです。
experimentalではsimuconf.tabで1タイルあたり何キロか設定できます。デフォルトではmeters_per_tile=250、つまり1タイルが250mに設定されています。(meters_per_tileの値=1タイルあたりの距離[m])
※バージョン10.0以前では、distance_per_tile=25(distance_per_tileの値×10=1タイルあたりの距離[m])がデフォルトでしたが、変更されました。
experimentalでもstandardと同じく運賃や運行費は原則距離単位(タイル単位ではない)で計算されるのでこの距離スケールが非常に大きな意味を持ちます。また、後述の「物理に従った挙動」にも大きく影響します。
:駅の容量とコスト|
standardではpakで駅の「level」だけ定義できますが、experimentalでは各駅ごとに容量、建設・維持費用等を設定できます。
:車庫毎の車種制限|
standardでは例えば鉄道の車庫であれば鉄道扱いの車種全てを新造できます。
experimentalでは扱える車種が「ディーゼルだけ」「電車だけ」「客車だけ」などと限定された車庫を作ることができます。(experimentalに対応したpakファイルが必要)
:幾何的処理|
standardでは距離の計算が全てタテ・ヨコ移動として計算されます。すなはち90°カーブ1回でも45°カーブ2回でも計算される距離は変わらないということです。(訳者注:これが最新のstandardで本当に正しいかは疑問が残ります。)experimentalではユークリッド幾何学に基づいた距離計算が行われるそうです。
**制御の部 [#kb85d5ff]
:貨物や旅客のルート検索|
standardでは最も乗り換えの少ない経路を採用します。乗り換え回数が最低の経路が複数ある場合は、その中からランダムに1つ選ばれます。目的地がどれだけ近くても同じ集客範囲の中でなければ徒歩移動しません。
experimentalでは各経路での旅行時間が計算され、これが最短の経路が採用されます。旅客の場合駅への徒歩移動も旅行時間に考慮され、停車駅の詳細ウィンドウにはその駅から直接接続されている駅への旅行時間が表示されます。また、旅行時間が短い場合徒歩移動も行われる場合があります。simuconf.tabでいくつかのパラメーターを調節できます。
:容量オーバーの駅の扱い|
standardでは"avoid_overcrowding"や"no_routing_over_overcrowding"などの設定に従ってルート検索が行われます。
experimentalでは"avoid_overcrowding"の扱いが異なり、このパラメーターがonの時キャパオーバーしてる駅に到着した旅客は自動的に破棄されます。また"no_routing_over_overcrowding"は非現実的なデッドロックを引き起こすということで無効化されています。また、混雑しすぎなどの影響で旅客が長時間乗り換え待ち状態になった場合(順番待ちによる待ち時間が長すぎた場合)、その旅客は破棄され、併せてその旅客に対する運賃の全額払い戻しが行われます。(払戻額は厳密な値ではありません。)払戻額は編成もしくは路線編集ウィンドウで"Refunds"の項目で表示されます。また「不幸せ」の値も上昇します。これらの処理の閾値などはsimuconf.tabで一部編集できます。
:重量制限|
experimentalでは道路、線路、橋やトンネルといった全ての交通路に重量制限が設定されます。設定された重量制限を超過する車両が通行する場合、通常の走行速度に対して重量超過分だけ速度制限が加わり、併せてプレイヤーにダイアログで通知されます。橋以外の通行路(線路や道路)の場合、重量制限とは車重に対する重量制限(積載物の重量を考慮しない)です。これに対し橋の場合積載物を含めた全重量に対する重量制限となります。simuconf.tabでこの機能を無効化するなどの調整ができます。
:コーナリング|
standardでは「摩擦」によって走行速度に関係なく列車のスピードが落とされます。
experimentalでは「摩擦」による減速ではなく、線形に応じた速度制限が課されます。また、車体傾斜装置を搭載する車両はより高速で通過できます。(experimental用のpakセットが必要?)これらの機能はsimuconf.tabで調整できます。
:物理的挙動|
standardでは編成の出力による影響が考慮されますが、experimentalではこれに加えて起動時の牽引力、坂の連続性などが考慮されます。また、各編成のブレーキ力に応じて減速するタイミングが異なります。
:入線制限|
※この機能に必要なパラメーターはexperimental用pakセット内の各車両、各線路で定義されるためstandard用pakセットでは反映されません。
experimentalでは乗り入れ制限を車種単位、線路の種類単位で設定できます。"permissive"な制限の場合、例えば第三軌条方式の車両の場合permissiveな制限を加えると第三軌条方式で電化された線路のみに入線できます。なおこれは他の車種の第三軌条方式線路への乗り入れを制限するものではありません。この設定だけではディーゼル車両も、架線集電方式の電車も第三軌条方式電化線路に入線できます。
逆に"prohibitive"な制限の場合、例えば地下鉄用トンネルへの入線を前面貫通扉装備車のみに限るという制限を加えることができます。この制限は該当車種が他の種類の線路に入ることを制限するものではありません。例えば地下鉄用トンネルへ入線できる前面貫通扉装備車は地上区間のフツーの線路も走行できます。
:折り返し|
standardではあらゆる編成が折り返し地点で即座に180°回転しますがexperimentalでは扱いが大きく異なります。また、experimentalでは折り返し時に「折り返し時間」が課されます。
例えば電車などの、折り返しせずとも最後尾を先頭にして運転できる編成の場合、折り返し地点で画像の回転は行われません。また、折り返し時間は最も短くなります。
一端に両方向運転が可能な機関車がついていて、後ろにトレーラがついている場合、双方向運転に対応した車両の画像は回転せず、機関車の位置だけが変わります。折り返し時間は折り返しせずとも最後尾を先頭にして運転できる編成よりも長くなります。
一端に片方向運転のみ可能な機関車(蒸気機関車など)がついていて後ろに貨車がある場合、画像の扱いはstandardと同様で,より折り返し時間が長くなります。
折り返し地点に[積むまで待機]による発車時刻が設定されていた場合、設定された発車時刻に発車するようにload(積載)→reversing(折り返し)が行われます。但しその路線の列車が'''%%%はじめて折り返し地点に到達したとき%%%'''は時刻が乱れます。(折り返し時間がどれだけになるかプログラム内部で先読みしてないからだそうです。)折り返し地点に2回目以降到達したときはちゃんと折り返し時間を含めて制御してくれます。
:定員超過の扱い|
experimentalでは乗り物に「過積載容量(Overcrowded capacity)」が設定できます。この状態になると乗客の「快適性」(長距離移動の時ほど影響大)は大幅に下がり、収入も下がります。また、路線編集ウィンドウや編成ウィンドウでは紫色で表示されます。
これらの数値はpakで定義されるためこの機能にはexperimental対応のpakファイルが必要です。
:積載時間|
experimentalでは積載する旅客・貨物の量に応じて積載時間が課されます。また積載時間は編成中の最も遅い車両を基準に決められます。
:ブレーキ|
物理的挙動の所で述べた通りexperimentalでは車両ごとにブレーキ力が設定されます。編成のブレーキ力は編成のスピード、重量、走行抵抗(experimental用pakでの個々の車両で定義)、個々の車両のブレーキ力等から計算されます。カーブに進入する前にブレーキが作動します。線路上の信号はその走行速度における制動距離に応じて速度制限を課します。
:空港について|
(experimental用pakセット内にあるsimuconf.tabで定義された場合を除き)experimentalでは空港に必ず管制塔が必要です。また、各航空機には離着陸に必要な最短滑走路長が設定されます。
:積載順序|
standardではその駅から近い(?)順に旅客が搭載されます。例えばA駅→B駅→C駅と列車が停車する場合、まずA駅に行く旅客が全員載せられ、続いてB駅に行く旅客、C駅に行く旅客と続きます。定員オーバーが発生した場合、C駅に行く旅客が最も多く駅に滞留するということになります。
experimentalではその駅に到着した順番に、要は先着順に載せられます。
貨物についても全く同様です。
:製品の出荷先|
experimentalでは製品の出荷先は輸送に必要な所要時間に従って増減します。(standardでは遠近に関わらず等分されます。)
**その他の部 [#td9ca6ff]
:収入配分|
simutransでは他のプレイヤーが自社の線路等を通行した場合に「通行料」を徴収することができます。standardでは一律の値として、編成の運転コストに対する割合と軌道の維持費に対する割合で設定できますが、experimentalではコレに加えてそもそも編成の収入の何%を通行料として徴収するか決めることができます。
:アクセス権|
standardでは駅や線路を違うプレイヤーと原則接続できませんが、公共事業を使えば接続できます。公共駅の維持費などは公共事業が払い、公共化した部分は公共事業でしか編集できません。
experimentalでは他のプレイヤーに自社の線路へのアクセス権を付与することができます。たとえ線路が接続されていてもアクセス権がなければ車両を乗り入れさせることはできません。
:プレイヤーカラー|
experimentalではプレイヤーカラーを変更すると全てのプレイヤーカラー使用部分に反映されます。
:自動編成置き換え|
standardでは編成を置き換えるとき、該当編成を手動で車庫に送り編集する必要があります。
experimentalでは車庫送りすることなく自動的に置き換えることができます。
:編成の更新|
standardでは編成をアップグレードすることはできません。
experimentalではexperimental用の車両において、アップグレードにより新造より安く車両を購入できます。
:都市への電力供給|
experimentalでは市域内に一つ変電所を建設し、送電線を接続すれば市域内にある全ての産業施設へ電力が供給されます。(standardでは電力を供給したい全ての産業施設に変電所を横付けする必要があります。)また、都市自体も電力を消費し、必要電力量を上回る電力が供給されたときは都市がより早く発展します。
:都市の立地|
新しいマップを作るときexperimentalではstandardでの設定に加えて、大都市の数、塊の中の都市の数(これについてはあまりよくわからないのでわかる方、加筆・訂正お願いします)が設定でき、都市が海や河川の近く、より高度が低い場所に立地しやすくなります。また、川が高地まで伸びやすくなります。
また、都市のサイズはstandardでは中央値の設定に従ってランダムになりますが、experimentalでは「ジップの法則(ジフの法則)」に従って決まります。
:塗装|
standardではある車種の表示は満載時・空載時の2つしか設定できません。例えば103系の黄色と103系のオレンジは別車種として扱われます。
experimentalでは1つの車種が複数の塗装パターンを持つことができます。例えばクリーム色の117系が京阪神で役目を終えたので末期色に塗装を変更した後廣嶋送りにするということが、編成を買いなおさなくてもできるようになります。(experimental用のpakセットが必要です。)
:橋と高架|
standardでは橋は長さの制限はあれど高さの制限がありません。このため広い海をブチ抜くということができてしまいます。また、建物の上に高架を建設した場合後々その建物が成長して高架を突き抜けるといったことが発生します。
experimentalでは橋は海の深い部分を通過できません(長さが制限されてないものに限る)。また、高架の下の建物が成長して高架を突き抜けることもありません。
:土地の造成|
standardではなんもない海のど真ん中に土地を造成することができますが、experimentalでは海の深いところ(深度2以上)に新たな土地を造成することができなくなります。
:市道|
standardではプレイヤーが市道を自由に消去できます。また市内にプレイヤーに所有権がある道路を建設することもできます。また、市道の最高速度は50km/hであり、変更できません。
experimentalでは建物を都市から孤立させてしまうような市道の消去ができなくなります。また、市域内に建設した道路(橋や高架を含むかは定かではありません)は即時に都市によって接収され、維持費は都市によって支払われます。よって他のプレイヤーも自由に通行することができ、制限速度はプレイヤーが建設した道路の制限速度によります。
:設定の上書き|
experimentalではゲームごとに保存されている特定の設定値をゲームを始めた後でも上書きできます。(standardではmenuconf.tabを書き換えることでできます。)simuconf.tabの「progdir_overrides_savegame_settings=1」で、本来ゲームごとに保存されている特定の設定値はゲームの読み込みの時ごとにsimconf.tabに記述されることに置き換えられます。
*対応アドオンの作成について [#i4173ccc]
experimental対応のアドオンPakファイルを作成するには、本体に同封されているmakeobj.exeを使用します。
experimental特有の記述項目については[[こちら>simutrans experimental/アドオン開発]]。